大人の最強学習法 その1 ~「聞くだけ」ではムリ!まずは文法から!


大人の語学学習は、残念ながら赤ちゃんや子供が耳で覚えるようにはいきません。
子供が母語(第一言語)を覚えていくときのような超習得力というのは、おおよそ7歳頃までの言語習得期(臨界期)までにしか発揮されないと言われています。
Wikipedia:臨界期仮説

「聞くだけで英語が口をついて出てくる」というような教材がありますが、残念ながら、大人が外国語のCD(今どきCDって!)を聞くだけで赤ちゃんが言葉を覚えるように習熟するということは考えにくいのです。
全く何もしないよりも、何らかの効果はあるかもしれませんがね。勉強しているという気になれるという精神安定剤的な効果とか。

こちらの日経ビジネスオンライン記事(2017年3月25日付)でも、英語の学習には英語オンリーではなく「母語をうまく活用する」ことが効果的という専門家による最新の見解が紹介されています。「聞くだけ」のような方法は24時間365日徹底しないと効果が無いと思います。



こういう話をしていると、「やっぱ必要性がないとムリだよ、現地人とやりとりするとか」なんてことを言い出す人がいますが、それは学習環境なりモチベーションの問題です。学習の方法ではありません。

大人にとっての、最も効率的な語学学習の方法をズバリ以下にご紹介します。

1. 薄い文法書を一冊 → アタマに見取り図をつくる

別の場所でも書きましたが、「理より入るものは上達早く、業より入るものは上達遅し」。大人は臨界期以前の子供のような超能力がない代わりに、論理的思考力があります。これを上手に利用しましょう。
まずは、書店で一番初心者向けの一番薄い文法書を一冊買って、ざーっと流し読みします。
文法書がなければ文法にも触れている入門書で構いません。最初から会話集や単語帳を買うのはカネと時間のムダです。それはもっと後で買えばいいものです。

この段階では、いちいち各事項を記憶したり単語の書き取りをしたりする必要はありません。演習問題があればひととおりやってみますが、こだわる必要はありません。余裕があれば音読してみてもいいでしょう。

ここでの目的は、「その言語の特徴・見取り図」をアタマの中に作ることです。文字や発音の特徴、文法上の特徴(時制の扱い方、語順、品詞の使い方などなど)を、日本語や英語と対比しつつおおまかにたたき込みます。

2. 薄い文法書を音読 → 身体で理解する

流し読みでおおよそ見取り図がアタマに入ったら、1で買った文法書を音読します。
見取り図がつくれなくても、アタマに入ってなくてもかまいません。音読すれば勝手にアタマに入ってきます。
音読を繰り返すことで、論理的な理解と音声・発話による体感的な理解が結びつきます。
東大在学中に司法試験に合格した山口真由さんで有名になった7回音読法は非常に有効です。「7回読むくらいで理解できれば苦労しない」と思う人はだまされたと思ってやってみてほしいです。実際にやってみると、7回音読するのはなかなかツライことです。しかし、7回も音読していると最初は呪文のようだった記述もなんとなく理解できてきます。山口さんのように100%の理解に至るというわけではなくとも、かなりの部分が記憶に残ってくれます。


東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法

先ほど「聞くだけで」には否定的なことを書きましたが、「読むだけで」はおおいにアリます。音読はいつのまにか暗記と理解のすすむ魔法のメソッドといっていいでしょう。中国人やインド人で数カ国をあやつる人に聞いてみても、やはり音読の必要性を語っていました。

教材にCDが付いていたらシャドウイングをするのもいいでしょう。自分の音読を録音して繰り返し聞いてみるのもオススメです。

3. 一番易しい検定の問題集・参考書で演習

2の音読によって、基本的な単語や文法的な特徴など、おおむねその言語についての知識が入ってる状態になってはいるかと思います。一方で、単語力不足(特に、意識的に覚えないといけない数字とか曜日、身の回りの基本単語など)もあり、ごく基本的な文を作るのも難しいという状態でしょう。

まずは、一番易しい検定・資格試験の参考書や過去問を買ってきて、やってみます。多くの事項は1の文法書に書いてある筈です。問題を解くことで、文法の再確認・1の復習にもなるでしょう。あれだけ音読したのに、問題として出されるとぱっとわからないということも多いものです。
検定の問題は、日本人や初学者が間違えやすいポイントをねらって作られています。文法書や参考書をだらっと進めるだけでは、その辺の勘所がわかりません。問題を解くことで理解が深まります。

一番易しい検定の場合、必須単語数が500くらいだと思います。どんな言語でも、単語を1200語くらい習得するまでは、なかなか学習効率が上がりません。このあたりは、検定の緊張感を利用して一気に暗記してしまうに限ります。暗記も、やはり音読・シャドウイングが有効です。

4. 例文・短文暗記

一番易しい検定に受かって以降、入門者でもないがまだまだ初心者という段階での学習をどうするか。ここでも基本的には検定・資格試験の参考書や過去問が有効です。

基本的な語彙力や文法力を鍛えるために、やはり音読学習に向いた教材を利用するとよいでしょう。オススメは、文法事項の解説がしっかりしている短文集・文例集を買って、文章を暗記するくらいの勢いで音読することです。基本例文を身につけることによって単語力も同時に養成します。

中級レベル(CEFRのA2~B1;だいたい各種検定の3級程度、単語数2000くらい)までは、ひたすらこの方法でいいでしょう。

暗記については別にページを作りました。


(画像クレジット Jakub Hałun; Three wise monkeys, Tōshō-gū Shrine, Nikkō)

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