目標設定は、検定や資格試験を利用せよ
このブログで声を大にして言いたいことは、語学学習において曖昧な目標設定は避けるべきと言うことです。教材を買う、NHK講座を始める、英会話学校に行く、短期留学する...どの場合でも、始める動機として必ず「せめて、日常会話くらいできるようになりたい」というものを挙げる人がいます。
こういうのはダメです。100%失敗します。
私なんて口べたなので日常会話なんて日本語ですら知った人としか満足にこなせません。なぜ初学者がそんなだいそれた目標を掲げるのか、理解できません。日常会話って何ですか?自分が日常的にしたいと思う会話に必要な文法知識と語彙数、そういったものが明確にイメージできない限りは、手を出すべきではありません。
では、何を目標に置くか?
ここで勧めたいことは、目標が曖昧な初学者であればとりあえず「検定○級」「○○テスト○級」といった既存の試験・資格レベルを目標にすべきということです。以下にその理由を書きます。
理由1 「理屈(文法)」から入ることができる
書店に行けば、語学の検定試験に対応した参考書的なテキストが売っています。そして、参考書であれば必ず文法の記述があるはずです。つまり、検定にフォーカスするということは文法をきちんと学べるということです。初学者ほど文法が重要なのです。あの坂本龍馬も学んだ北辰一刀流の開祖、剣豪・千葉周作の言葉にこのようなものがあります。
上達の場に至るに二道あり、理より入るものあり、業より入るものあり、何れより入るも善しといへども、理より入るものは上達早く、業より入るものは上達遅し「赤ちゃんは勉強しませんよね」というタワ言キャッチコピーの教材のことは忘れましょう。我々アラフォーには母語習得時期の赤ちゃんのような超記憶力はないのです。その代わりに、論理的に考えることのできる知性があります。多くの場合、文法とは論理であり規則です。文法という仕組み、すなわち「理」から入ることで、記憶力ではなく規則に則って語学を習得できるのです。加齢と共に記憶力は衰えますが、論理的な理解力はむしろ高まります。
書店には他にも魅力的なテキストが沢山あることでしょう。イラストたっぷりの会話集とか。初学者はついそういった優しそうなテキストに目を奪われがちですが、それはむしろ中級以降で役立つもの。初学者のうちに買ってもお金のムダになります。
私もいつか使う日が来ると思って買った会話テキストが、版元がつぶれて音声データがダウンロードできなくなり無用の長物となった経験があります。テキストは要るときに買えばいいのです。 結局そういったテキストはお金のムダになります。
理由2 体系的に学習できる
個人的な経験ですが、私は会社員になって間もない時にプログラミングを習う機会がありました。できあがったシステムをメンテナンスしながら細かなマイナー修正を加えていくという物でしたが、完全OJT方式(=実践で覚えろ)でレクチャーしてくれる人もいません。そんな状態でも数年やっていれば詳しくはなりますが、ずいぶんムダな試行錯誤をしたと思います。やはり学校できちんと体系をたたき込んできた人には勝てないと思ったものです。たとえば、いきなり会話教室などに行ってしまう。これは悪いOJTです。文法や他の基本的な単語がわからぬまま丸暗記したりする羽目になります。それは結局、後から振り返るとムダな試行錯誤となるでしょう。
語学とは体系です。読む、書く、聞く、話すという各技能があり、それぞれレベルごとに必要とされる文法知識、単語数、音声への慣れ度合いなどが異なります。
そして、それをレンガのように積み重ねるのが学習の王道です。文法が不確かなうちに気の利いた言い回しを覚えたりしてもちぐはぐですし、逆に聞く話すをおざなりにして文法だけ学ぶのも味気ないものです。
単語を読み、覚えるために書き、声に出して話し、その結果聞き取れるようになり、というループを、平易なものから複雑・高度なものまで順番に積み上げていくというプロセスが、実は一番効率的で近道なのです。
理由3 締め切り効果
私にとっては、これが検定を利用する最大理由と言っても過言ではありません。人間、1日30分とか、1日1ページとか決めても、何かと理由をつけてサボってしまうものです。調子が悪い、疲れた、昨日2ページやったからいいだろう...云々。
こうした、その日にできるだけ進めるというやり方で学習を継続するのは、よほど負荷が軽いか、意思が強くない限りムリです。
学習がツラくてつまらない効果レベル(単語数1200程度)に達するまでが最も離脱率の高い時です。この、効果レベル以前の時期をいかに速く駆け抜けるかがポイントと言えます。
たとえばあなたが3ヶ月後の検定に申し込んだとしましょう。もう検定料も払ってしまっています。そうすると、イヤでも計画を立てざるをえません。3ヵ月以内に単語を○語覚え、問題集を○冊こなす、そのためには1日にこれとこれをやって...という目安とハリが生まれます。
人間は弱い生き物です。検定が自らに課してくれる”強制力”を上手に利用しましょう。
理由4 達成度がわかる
たとえば中国語検定の場合、
4級:中国語の基礎をマスターと、学習時間や単語数の目安まで書いてあります。検定を受けることで自分の実力を客観的に把握できます。
平易な中国語を聞き,話すことができること。
(学習時間120~200時間。一般大学の第二外国語における第一年度履修程度。)
発音(ピンイン表記)及び単語の意味,常用語500~1,000による単文の日本語訳・中国語訳。
理由5 独習しやすい
検定試験はテキストが豊富なので、独学に向いています。誰もが子供の頃にやった、教科書を見る、必要な事項をマスターする、単語を覚える、小テストで確認する、というごく当たり前の学習習慣をそのまま行うだけです。
つまらないでしょうか?そんなことはありません。人から強制されたことではなく、自分の意思で取り組む学習は楽しいものです。
理由6 履歴書に書ける
下世話ですが、何があるかわからない40代...動機付けとして重要です。このご時世、スキルが1つでも多いに越したことはありません。
”オーストラリアに半年語学留学してました”だけではアピールになりません。
それで、結局TOEICやTOEFLはどのくらいなの?というのが人の関心でしょう。
たとえ趣味の域、3級や4級といったレベルでも、何かの客観的に認定された資格であればそれは価値があると思います。少なくとも、”この人はコツコツ勉強ができる人なんだな”、”目標に向かって自分で努力できる人なんだな”というのが伝わります。
もちろん、特定の目的のために語学取得を目指すためということでしたら、検定のような総花的な知識は非効率かもしれません。しかし、そういった場合は例外的だと思います。
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